「老人ホームなんて、年金でなんとかなるでしょ?」
もしそう思っているなら、少しだけ注意が必要です。実は今の現役世代が直面するのは、年金だけでは厳しくなるケースもある、かなりシビアな現実だったりします。
老後の住まいは、これからの暮らしを左右する大きな決断です。パンフレットにはなかなか書かれていないお金のリアルと、後悔しないための備えをスッキリまとめました。
1. 施設によってお値段は天と地ほど違う
老人ホームと一口に言っても、実はスマホのプラン以上に種類がバラバラ。大きく分けると、「民間のホテル並み施設」か「公的な福祉施設」かで、費用負担が全く違います。
民間の有料老人ホーム(介護付き・住宅型)
民間企業が運営する施設で、食事・掃除・洗濯からレクリエーションまでサービスが充実しています。
費用は場所によって驚くほど差が出ます。
また、入居時には一時金のほかに「月額費用の2〜3ヶ月分」を敷金として預ける施設も多いため、初期費用は余裕を持って見積もる必要があります。
公的な特別養護老人ホーム(特養)
社会福祉法人や自治体などが運営する公的色の強い施設で、月10〜15万円前後と安価です。
ただし、入居には「要介護3以上」という条件があります。これは、歩行や排泄、入浴などで介助が必要になり、一人で生活するのがかなり難しくなる状態が目安です。
この「安くて安心」な特養は非常に人気で、地域によっては数年待ちというケースも珍しくありません。
2. パンフレットに載らない「消えるお金」
「月額20万円」という数字だけを見て安心するのは禁物です。実際に生活が始まると、次のような「隠れコスト」が毎月発生します。
結局、表示金額にプラス5万円くらいは余裕を見ておかないと、数年で貯金が底をつくことになりかねません。
介護保険の自己負担分
介護サービスを受けるには1〜3割の自己負担が必要です。
医療費・薬代
持病の診察代や、お医者さんに施設まで来てもらう往診費用は別料金です。
おむつ代・日用品費
実費請求が多く、おむつ代だけで月1〜2万円飛ぶこともあります。
レクリエーション・付き添い費
散髪代、イベント参加費、さらには通院の付き添い費まで「追加料金」になる施設もあります。
3. 入居時に払う「一時金」のカラクリ
多くの民間施設にある「入居一時金」ですが、実はこれ「将来の家賃の前払い」という性質を持っています。
初期償却(しょきゃく)
入居した瞬間に、一時金の10〜30%ほどが「施設利用権」として差し引かれ、返ってこなくなります。
償却期間
残りの金額を5〜7年かけて毎月取り崩していきます。もし期間内に退去すれば未経過分は返金されますが、期間を過ぎて長生きした場合は、追加を払わずに住み続けられるというメリットもあります。
「0円プラン」は初期費用が楽ですが、月額家賃が高く設定されています。「何年住むつもりか」によって、どちらが得か変わるのが難しいところです。
4. 「長生きリスク」とインフレの影
長生きは素晴らしいことですが、お金のプランニングとしては不確定要素になります。
月20万円で計算すると…
10年入居で2,400万円、15年入居だと3,600万円かかる計算になります。
わずか5年寿命が延びるだけで、なんと追加で1,200万円。100歳時代と言われる今、ギリギリの予算で入居するのはかなり危険です。
また、昨今の物価高(インフレ)によって、施設の食費や光熱費が上がり、利用料が途中で値上げされるリスクも考えておかなければなりません。
5. もし費用が払えなくなったらどうなる?
「お金が尽きたら即退去?」と不安になりますが、実際にはすぐ退去になるケースばかりではありません。ただ、支払いが続かない場合は退去相談につながる可能性があります。
そもそも入居時には、支払いが滞った際の保証や、本人が倒れた時の手続きを担う「身元引受人(連帯保証人)」を立てる必要があります。もし頼れる家族がいない場合は、保証会社や成年後見制度を利用することで入居できる施設もあります。
支払いが厳しくなりそうな時は、とにかく早めに施設側へ相談することが、トラブルを防ぐ唯一の手段です。
最終的には、より安い施設へ転居する道を検討することになります。状況によっては生活保護を利用しながら暮らせるケースもあります。
6. 後悔しないために!今すぐできる備え
少し厳しい現実をお話ししましたが、大切なのは「時間があるうちに、賢く備える」ことです。
新NISAで「老後専用」の積み立て
月1万円でも、長期で運用すれば複利の力が将来の大きな盾になります。
高額介護サービス費制度を知る
1ヶ月の介護保険自己負担額には上限(一般所得なら44,400円程度)があります。これを超えた分は申請すれば戻ってくるため、重度介護になっても「自己負担が無限に増える」ことはありません。
まとめ
老人ホームに必要なお金は、場所やサービス内容、そして自分の健康状態、さらにはインフレのような社会情勢によっても大きく変わります。都市部では数千万円規模の資産が必要になることもあれば、地方で年金の範囲内に収まることもあります。
大切なのは、「年金だけでなんとかなる」という思い込みを捨て、早めにリアルな数字を知っておくことです。パンフレット価格に加えて、数万円程度の追加費用を見込んでおくと安心です。
高額介護サービス費などの国の制度もうまく活用しながら、無理のない範囲で備えを始めてみましょう。
「まだ先」と目を逸らさず、今からリアルな数字と向き合い、新NISAなどを活用してコツコツと資産を育てていく。それだけで、数十年後の自分や家族の安心感は全く違ったものになります。
まずは、将来自分がどんな場所で過ごしたいか。そのための「具体的な予算」を書き出してみることから始めてみませんか?
